ホーム > セーフティ > ドリフトダイビングの漂流事故について考える。

ドリフトダイビングの漂流事故について考える。

2023年6月。沖縄県糸満市でダイバーが漂流して一時行方不明になる事故が発生した。無事に全員発見救出された様だが、いつも潜っているエリアの近くだっただけに、色々と考えさせられた。ヘリからダイバーが救出される映像を見ることが出来たが、特に海況が荒れている様には見えなかった。まあ多少の波はあったが通常レベルに見受けられた。

ドリフトダイビングの浮上位置と云うのは、事前に簡単な打ち合わせはするものの、思った通りにならないのが常である。トラブルがあれば早く上がるし、珍しい生き物がいればその場に留まったり、泳ぐ生き物がいれば全力で追いかけたりする。だからいつも浮上位置が異なるのは当然なのだ。そしてダイビングが終了したらシグナルフロートを打ち上げて、船にピックアップしてもらう。

この事故についての情報はまだ何も得ていないのだが、まあ簡単に言ってしまえば「船長が上がったフロートを見つけられなかった」ことが問題なのだ。平時であれば、船はダイバーの吐く泡を見ながらそれを追いかけたり、潮の流れと潜水時間から勘案して浮上地点を予測したりしながら操船をする。そして上がったフロートを見つけてダイバーを素早くピックアップするのが船長の職務だ。この日、この船で何があったかは知らないが、船長のスキルが足りなかったか、不注意だったのか、それともやはり海況のせいだったのか、いずれにせよ人為的ミスであることは間違いない。

ダイバーに出来ることは「ダイビングが終了したら水面に浮かんで船を待つ」基本的にこれだけだ。船にフロートを見つけてもらうことが出来なければ、それはもう漂流事故なのだ。

自身が通うショップ DRISTA はドリフトダイビングの専門店。当然ドリフトダイビングしかしない。我々のガイドはシグナルフロートに加えて、曇天や雨天の際に目立つ大光量のライト、数キロ先からでも認識できる大型のダイビングフラッグ、防水ハウジングに入れた携帯電話を持ってダイビングをしている。二重三重どころか四重の装備で挑んでいるから安心だ。当然すべてのゲストもシグナルフロートは持っているが、今回の事故から何か学ぶことはあるだろうか。

特に注意すべきはガイドからはぐれないこととシグナルフロートを常備することの2点だろう。荒天時に一人でロストしてしまい、万一シグナルフロートを持っていなければ、あっという間に漂流事故になる(フロートが無い場合はフィンを手に持って立てるのが有効だとボスに教わったので皆さまにもお伝えしておきます)。これ以外にプラスアルファとして何かできることがないかと考えたとき、ダイビングフラッグはかなり有効だが、あのフラッグを持っているのは主に神子元や沖縄の「ガイド」であって、ゲストが持つには仰々しい。ならばと考えたのが折り畳み式のセーフティフラッグ。GoPro 用の一脚を持っていることが前提となるが、BCのポケットに入れておける旗を(こちらのページにて解説)考案したので参考にして欲しい。

神子元でダイビングをした際に、友人がロストをして単独漂流をした現場を目撃したことがあるが、フロートを持った彼を船上から見つけるのは困難を極めた。時化ではない曇天。数十人が四方八方を見渡してロストしたダイバーを見つけようと必死に目を凝らしたが、ピンクのフロートを見つけることがなかなかできなかったのである。数十分に渡りロストしたダイバーを見つけられずにいたとき、担当ガイドは自身の失職を確信したという。この経験から、自分は「フロートだけでは不十分」という考えを持つ様になった。

さて冒頭の写真は以前からその存在を知っていて、ずっと購入したいと思っている「ダイバーズマーカSOS」のもの。かなり前に売られていた「ダイビング用の発煙筒」なのだが、どうやら今は入手できないらしい。これは漂流事故にかなり有効だと思うのだが、もう手に入らないのならばクルマ用の発炎筒を持って潜ってみるのはどうだろう。
普通の発炎筒は路上で何度か使ったことがあるが、多少の波が掛かったくらいで消えてしまう代物ではないので、多分海上でも使えるだろう。という訳で実は随分と前からダイビング用に買ったものが家にあるのだが、どうやって海中に持って行けば良いか思い浮かばずに放置してあった。

まずはネットで売っている筒状の防水ケースを探してみた。するとすぐにウォータープルーフケースというのを見つけることができたが、発炎筒が入るサイズのものは見つからなかった。次にメガネが入るサイズのマリンカプセルというのを見つけた。これなら発炎筒もはいりそうだが「生活防水」となっているから水深40メートルまでは耐えられないだろうか。ならはやはりオーダーで作るしかないか。

と、ここでふと室内あった筒状のケースに目が留まった。試しに発炎筒を入れてみるとピッタリ入った。これなら浸水の心配はないだろう。なぜならそれは水筒だからだ。容量の小ささゆえにあまり出番がないまま部屋の片隅に放置されていたサーモスの180mlの水筒。まさか発炎筒ケースに丁度いいとは思わなかった。水に入れてみるとプラス浮力なのが気になるが、デッドスペースをパテ埋めするなどして空気量を減らしてあげれば良いだろう。

本家のダイバーズマーカは1万円以上するから本当にピンチの時にしか使えないが、普通の発炎筒なら数百円だから割りと気楽に使える(使っちゃダメだが)。水筒の方も1,500円足らずなのでお財布に優しい。まあジップロックでも良さそうなものだが、それを言ってしまっては身も蓋もない。ただ、よくよく考えてみると発煙筒は飛行機に預入れも持ち込みもできない。遠征に持って行くことが出来ないのであればあまり意味は無いかもしれない。

更にガーミンから発売されている「インリーチ」という衛星通信用の機器を見つけた。この商品の詳細はこちらのページで解説しているので是非とも見て欲しい。すべてのガイドがこの端末を持つようになれば、今後漂流事故は一掃されるだろう。

このページが 役に立ったり面白かったら 評価をお願いします。
星1星2星3星4星5(評価: 5.00 - 4票)
Loading...
Category: セーフティ

コメントを書く

Your email address will not be published. Required fields are marked *

CAPTCHA


カテゴリー

Submit your video